社会保険(健康保険・厚生年金保険)、労働保険(雇用・労災保険)の加入義務について

社員からすると「あって当たり前」であって、「なければ不満となって離職率を爆アゲする」という、大変な手間のかかる労務管理ですが、会社の屋台骨といっても過言ではないこの業務。これがしっかりできていないと会社を成長させることはできません
担当者の中には「あって当たり前」を実現するために、なかなか日の当たる事が少ないなか、毎度カタチの違うトラブルに対処すべく、大変な苦労をされている方も多いのではないかと思います。
今日はそんな労務管理機能の一つである、社会保険や労働保険の加入義務についてのお話しです。
労務担当者にもっとスポットを当ててあげてください!

 

1. 会社として加入する保険

 

学生時代はほとんど関わることのなかったこの仕組み。逆に社会人になるとありがたみをとても実感する保険制度ですね。
病気をしたときや仕事中にケガをしたとき、離職したとき、スキルアップをしたいときなど、様々なシーンで労働者にとってとても心強い味方となってくれる保険です。
まずはその仕組みについて触れていきます。

 

① 社会保険とは

 

社会保険とは、健康保険と厚生年金保険の二つのことをまとめて呼ぶ時に使うことばです。
まずは制度面からみていきましょう!

 

Ⅰ)健康保険について

健康保険とは、病気やケガをした場合に安心して医療をsick受けることができるように、加入者が普段から保険料を納めて医療費の負担を支えあう、という助け合いの制度です。
窓口で保険証を提示することで、一部の医療費を負担するだけで診療を受けることができます
医療費が高額になったときは、限度額を超えた分が高額療養費として後から返してもらえる仕組みになっています。

 

ほかにも、出産育児一時金、業務外で怪我や病気をして4日以上連続して会社を休まなければいけなくなった時の傷病手当金など、加入者とその家族の生活を保障するための仕組みがたくさんあります。
健康保険の団体は、国民健康保険団体連合会や政府が管掌するもの(協会けんぽ)、組合として行うもの(組合けんぽ)など様々ありますが、出産育児一時金の支給額や高額療養費の上限額、保険料率、会社と加入者の負担割合についてそれぞれ異なる場合があります
(中には会社負担が6割という組合健保も存在します!)

通常(協会けんぽ)は従業員の給与から半額を徴収し、そこに会社の負担分(残りの半額)を追加して、翌月末に保険料を納付する、という流れになります。

 

Ⅱ)厚生年金保険について

厚生年金は公的年金の「2階建て部分」といった言われ方をしますが、これは1階部分の国民年金(基礎年金)に上乗せされる年金というところからきています。
法人企業の正社員は全員厚生年金加入者になっていると思いますが、厚生年金に加入すると、自動的に国民年金にも加入している事になります。
年金を受給するときも、しっかりと基礎年金に厚生年金保険の受給額が加算されます。

こちらも社員の給与から半額を徴収し、そこに会社の負担分(残りの半額)を追加して、翌月末に保険料を納付する、という流れになります。

下の図は厚生年金保険が年金の2階建て部分であることを示しています。
3階建て部分は確定拠出年金や確定給付年金などの私的年金制度となります。

 

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②労働保険とは

 

労働保険とは、雇用保険労災保険の二つをまとめて呼ぶ時に使われる言葉です。
まずは制度面です。

 

Ⅰ)雇用保険について

雇用保険は失業給付育児休業給付金といった雇用安定事業のほかに、失業の予防、雇用機会の増大、労働者の能力開発・向上等をはかるための能力開発事業も行っています(雇用保険二事業)。
ポリテクセンターなどの職業訓練校は、能力開発事業によって実施されています。
ちなみに、、
これに加入していないと、退職した社員が失業保険を貰えなくなるので「人を採用したい」とか「社員に定着してもらいたい」と考えているなら、従業員を雇った際には必ず加入しましょう!

雇用保険料は、社員と会社で負担します。
納付方法は、従業員の給与から毎月概算で控除してきた個人負担分と、会社の負担分と合算して1年分を一括で納付します。
概算で従業員から預かってきた保険料と、会社負担分として経費計上してきたものは、6月1日から7月10日の間に年度更新と呼ばれる事務処理を行って、確定納付金額を決定します。
年末調整同様、概算で毎月の給与から引いておいて、あとで確定した納付額と概算の差額を年度更新で清算する、といった具合になります。

なお、納付は一括で行われるのが通常ですが、以下の条件のどちらかを満たす場合には、分割して納付することも可能です。

  • 概算保険料が40万円以上である場合
  • 労災保険と雇用保険の両方にではなく、片方にのみ加入しており、その保険料が20万円以上である場合

分割して納付する場合は3回に分けて納付します。
保険料の計算はソフトを使えば簡単にできますが、会計にしっかり反映させようとすると結構大変だったりします

 

Ⅱ)労災保険について

労災保険は、仕事中のけがや病気、死亡(業務災害)があったとき、また通勤の途中の事故などの場合(通勤災害)に、国が会社に代わって給付・補償を行う制度です。
本来、従業員が仕事中にけがをしたときには、会社が療養費を負担して休業補償を行うことが義務づけられています。

しかしながら、会社に余裕がなかった場合、被災者に対する補償が十分にされないことも想定されます。
そういったことが起こらないように、労災保険制度が設けられています。
保険料は全額事業主負担です

労災保険料率は、事業の種類ごとに定められているため、事業の種類によって異なります。
『より危険度の高い作業などに従事する方の保険料率が高く設定されている』といった具合です。

 

2.社会保険の加入義務について

 

社会保険(健康保険・厚生年金)の加入条件は、ここ数年で何度か変更がありましたが、両保険とも加入義務発生の条件は同じです。
かつては加入させる義務がなかったパート、アルバイトの方にも加入義務が生じている可能性もあるので注意が必要です。
会社自体に加入義務が発生する・しないといった要件と、従業員の働き方によって加入させる義務が発生する・しないといった2段階で判断をすることになります。

①会社に対する加入義務の要件

 

Ⅰ)強制適用事業所

その名の通り、社会保険に加入する義務が発生する団体のことです。
対象となるのは、株式会社などの法人の事業所です。こちらは社長一人の会社でも対象になります。
また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業、などの場合を除いて社会保険の適用事業所となります。

 

Ⅱ)任意適用事業所

Ⅰ)の要件を満たしていなくても、事業所で働く半数以上の人が適用事業所となることに同意することで、事業主が申請すると任意適用事業所となることができます。
実務的には組合との合意によって適用事業所としての認可を受けることができるようになります。

 

②従業員の働き方によって生じる加入義務

まず社会保険の適用事業所で働く70歳未満の正社員は全員強制加入になります。
ややこしいのがパート・アルバイトの方の加入条件です。

 

Ⅰ)パート・アルバイトの方の加入義務が発生するパターン

 

  • 1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上の人
  • また、正社員の4分の3未満であっても
    Ⅰ)週の所定労働時間が20時間以上
    Ⅱ)勤務期間が1年以上見込まれること
    Ⅲ)月額賃金が8.8万円以上
    Ⅳ)学生以外
    Ⅴ)従業員501人以上の企業に勤務していること

この5つの要件を全て満たす方は、被保険者になります。

社会保険 事業所別適用区分強制適用任意適用
1.株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)    〇    -
2.一部業種を除く従業員が常時5人以上いる個人事務所    〇    -
3.従業員が常時5人以下の個人事務所    -    〇
4.従業員が常時5人以上いる個人事務所で2で除外された業種    -    〇

 

3.労働保険の加入義務について

 

労働保険(雇用保険・労災保険)は、常勤・パート・アルバイト・派遣等の名称や雇用形態にかかわらず、労働者を1人でも雇っている事業場には加入義務があります。
人を雇ったら必ず加入しなければならない」と覚えておいて問題はないでしょう。

少しだけ例外的に強制適用とならないケースがありますが、これを暫定任意適用事業といいます。
農林水産業を営む方以外は覚える必要はありません。

この暫定任意適用事業は、雇用保険と労働保険で条件が異なるので記載しておきます。

 

①雇用保険の暫定任意適用事業となる事業所

  • 農林水産の個人事業者であって、常時5人未満の従業員を雇用する事業所

 

②労災保険の暫定任意適用事業となる事業所

  • 労働者数5人未満の個人経営の農業であって、特定の危険又は有害な作業を主として行わない
  • 事業労働者を常時使用することがなく、かつ、年間使用延労働者数が300人未満の個人経営の林業
  • 労働者数5人未満の個人経営の畜産、養蚕又は水産(総トン数5トン未満の漁船による事業等)の事業

こちらも社会保険同様、従業員の半数以上の同意をもって、適用事業者となることができます。

労災保険加入義務
株式会社などの法人
個人事業
個人事業の農林水産業
常時雇用する従業員5人未満
個人事業の農林水産業
常時雇用する従業員5人以上
週20時間未満    〇 〇    △    〇
31日以上雇用される見込み
がない従業員
    〇 〇    △    〇
週20時間以上
30時間未満
    〇 〇    △    〇
週30時間以上
    〇 〇    △    〇

 

ただし、雇用保険は・・・

  • 1週間の所定労働時間が20時間未満
  • 同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない人を雇い入れた場合

このケースに該当する労働者を使用する場合、強制適用事業所であっても、当該労働者を保険に加入させる必要はありません。
僕が昔、飲食店でアルバイトをしていたとき、1日7時間、週4日とか働いていましたが、雇用保険には入れて貰っていませんでした。

雇用保険加入義務
株式会社などの法人
個人事業
個人事業の農林水産業
常時雇用する従業員5人未満
個人事業の農林水産業
常時雇用する従業員5人以上
週20時間未満    ー ー    ー    ー
31日以上雇用される見込み
がない従業員
    ー ー    ー    ー
週20時間以上
30時間未満
    〇 〇    ー    〇
週30時間以上
    〇 〇    ー    〇

 

4.まとめ

社会保険、労働保険は働く人の味方であり、会社にとっては金銭的に負担となるものでもあります。
しかし、労働保険に加入していない状態で従業員が仕事中に大きな怪我をした場合、多額の損害賠償を支払うことになる可能性は高いですし、そういった意味では会社を守ってくれるという側面もあります。

そして何より、加入義務があるのに加入していないとなると、採用や従業員の定着、教育なんて夢のまた夢です。
最近話題の雇用調整助成金も受け取ることができないし、ハローワークでの求人も利用できなかったりします。

テレワークを始めたはいいけど、法律を守るために着席確認をしなければならなくなった、なんて話を聞くと基準法遵守にどれだけの価値があるんだろうと思ってしまう事があったりしますが、企業ブランディングの観点からも加入すべきです。

ちなみに、
加入義務を無視していた場合、懲役や罰金といった刑事罰に加え、さかのぼり加入、企業名の公表といった罰があったりします。

人を雇って育て、会社として成長していきたい!と考えておられる経営者さまであれば、保険への加入は必須です。

ネガティブなものとして受け止めず、従業員が最低限の安心をもって働ける職場づくりに必要なものだと考えていきましょう!

それではまた!

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